求优质日语短文! 10
求日语短文几篇,要有意境的,唯美点的,汉字要标上假名(不要拿歌词来充数)。如果跟动漫和游戏有关就更好了。...
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这个如何,不太常见的汉字都注音了……
注文の多い料理店
宫沢贤治
二人の若い绅士《しんし》が、すっかりイギリスの兵队のかたちをして、ぴかぴかする鉄炮《てっぽう》をかついで、白熊《しろくま》のような犬を二|疋《ひき》つれて、だいぶ山奥《やまおく》の、木の叶のかさかさしたとこを、こんなことを云《い》いながら、あるいておりました。
「ぜんたい、ここらの山は怪《け》しからんね。鸟も獣《けもの》も一疋も居やがらん。なんでも构わないから、早くタンタアーンと、やって见たいもんだなあ。」
「鹿《しか》の黄いろな横っ腹なんぞに、二三発お见舞《みまい》もうしたら、ずいぶん痛快だろうねえ。くるくるまわって、それからどたっと倒《たお》れるだろうねえ。」
それはだいぶの山奥でした。案内してきた専门の鉄炮打ちも、ちょっとまごついて、どこかへ行ってしまったくらいの山奥でした。
それに、あんまり山が物凄《ものすご》いので、その白熊のような犬が、二疋いっしょにめまいを起こして、しばらく吠《うな》って、それから泡《あわ》を吐《は》いて死んでしまいました。
「じつにぼくは、二千四百円の损害だ」と一人の绅士が、その犬の眼《ま》ぶたを、ちょっとかえしてみて言いました。
「ぼくは二千八百円の损害だ。」と、もひとりが、くやしそうに、あたまをまげて言いました。
はじめの绅士は、すこし颜いろを悪くして、じっと、もひとりの绅士の、颜つきを见ながら云いました。
「ぼくはもう戻《もど》ろうとおもう。」
「さあ、ぼくもちょうど寒くはなったし腹は空《す》いてきたし戻ろうとおもう。」
「そいじゃ、これで切りあげよう。なあに戻りに、昨日《きのう》の宿屋で、山鸟を拾円《じゅうえん》も买って帰ればいい。」
「兎《うさぎ》もでていたねえ。そうすれば结局おんなじこった。では帰ろうじゃないか」
ところがどうも困ったことは、どっちへ行けば戻れるのか、いっこうに见当がつかなくなっていました。
风がどうと吹《ふ》いてきて、草はざわざわ、木の叶はかさかさ、木はごとんごとんと鸣りました。
「どうも腹が空いた。さっきから横っ腹が痛くてたまらないんだ。」
「ぼくもそうだ。もうあんまりあるきたくないな。」
「あるきたくないよ。ああ困ったなあ、何かたべたいなあ。」
「喰《た》べたいもんだなあ」
二人の绅士は、ざわざわ鸣るすすきの中で、こんなことを云いました。
その时ふとうしろを见ますと、立派な一轩《いっけん》の西洋造りの家がありました。
そして玄関《げんかん》には
〔#ここから4字下げ、横书き、中央揃え、罫囲み〕
RESTAURANT
西洋料理店
WILDCAT HOUSE
山猫轩
〔#ここで字下げ终わり〕
という札がでていました。
「君、ちょうどいい。ここはこれでなかなか开けてるんだ。入ろうじゃないか」
「おや、こんなとこにおかしいね。しかしとにかく何か食事ができるんだろう」
「もちろんできるさ。看板にそう书いてあるじゃないか」
「はいろうじゃないか。ぼくはもう何か喰べたくて倒れそうなんだ。」
二人は玄関に立ちました。玄関は白い瀬戸《せと》の炼瓦《れんが》で组んで、実に立派なもんです。
そして硝子《がらす》の开き戸がたって、そこに金文字でこう书いてありました。
〔#ここから3字下げ〕
「どなたもどうかお入りください。决してご远虑《えんりょ》はありません」
〔#ここで字下げ终わり〕
二人はそこで、ひどくよろこんで言いました。
「こいつはどうだ、やっぱり世の中はうまくできてるねえ、きょう一日なんぎしたけれど、こんどはこんないいこともある。このうちは料理店だけれどもただでご驰走《ちそう》するんだぜ。」
「どうもそうらしい。决してご远虑はありませんというのはその意味だ。」
二人は戸を押《お》して、なかへ入りました。そこはすぐ廊下《ろうか》になっていました。その硝子戸の裏侧には、金文字でこうなっていました。
〔#ここから3字下げ〕
「ことに肥《ふと》ったお方や若いお方は、大歓迎《だいかんげい》いたします」
〔#ここで字下げ终わり〕
二人は大歓迎というので、もう大よろこびです。
「君、ぼくらは大歓迎にあたっているのだ。」
「ぼくらは両方兼ねてるから」
ずんずん廊下を进んで行きますと、こんどは水いろのペンキ涂《ぬ》りの扉《と》がありました。
「どうも変な家《うち》だ。どうしてこんなにたくさん戸があるのだろう。」
「これはロシア式だ。寒いとこや山の中はみんなこうさ。」
そして二人はその扉をあけようとしますと、上に黄いろな字でこう书いてありました。
〔#ここから3字下げ〕
「当轩は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください」
〔#ここで字下げ终わり〕
「なかなかはやってるんだ。こんな山の中で。」
「それあそうだ。见たまえ、东京の大きな料理屋だって大通りにはすくないだろう」
二人は云いながら、その扉をあけました。するとその裏侧に、
〔#ここから3字下げ〕
「注文はずいぶん多いでしょうがどうか一々こらえて下さい。」
〔#ここで字下げ终わり〕
「これはぜんたいどういうんだ。」ひとりの绅士は颜をしかめました。
「うん、これはきっと注文があまり多くて支度《したく》が手间取るけれどもごめん下さいと斯《こ》ういうことだ。」
「そうだろう。早くどこか室《へや》の中にはいりたいもんだな。」
「そしてテーブルに座《すわ》りたいもんだな。」
ところがどうもうるさいことは、また扉が一つありました。そしてそのわきに镜がかかって、その下には长い柄《え》のついたブラシが置いてあったのです。
扉には赤い字で、
〔#ここから3字下げ〕
「お客さまがた、ここで髪《かみ》をきちんとして、それからはきもの
の泥《どろ》を落してください。」
〔#ここで字下げ终わり〕
と书いてありました。
「これはどうも尤《もっと》もだ。仆もさっき玄関で、山のなかだとおもって见くびったんだよ」
「作法の厳しい家だ。きっとよほど伟《えら》い人たちが、たびたび来るんだ。」
そこで二人は、きれいに髪をけずって、靴《くつ》の泥を落しました。
そしたら、どうです。ブラシを板の上に置くや否《いな》や、そいつがぼうっとかすんで无くなって、风がどうっと室の中に入ってきました。
二人はびっくりして、互《たがい》によりそって、扉をがたんと开けて、次の室へ入って行きました。早く何か暖いものでもたべて、元気をつけて置かないと、もう途方《とほう》もないことになってしまうと、二人とも思ったのでした。
扉の内侧に、また変なことが书いてありました。
〔#ここから3字下げ〕
「鉄炮と弾丸《たま》をここへ置いてください。」
〔#ここで字下げ终わり〕
见るとすぐ横に黒い台がありました。
「なるほど、鉄炮を持ってものを食うという法はない。」
「いや、よほど伟いひとが始终来ているんだ。」
二人は鉄炮をはずし、帯皮を解いて、それを台の上に置きました。
また黒い扉がありました。
〔#ここから3字下げ〕
「どうか帽子《ぼうし》と外套《がいとう》と靴をおとり下さい。」
〔#ここで字下げ终わり〕
「どうだ、とるか。」
「仕方ない、とろう。たしかによっぽどえらいひとなんだ。奥に来ているのは」
二人は帽子とオーバーコートを钉《くぎ》にかけ、靴をぬいでぺたぺたあるいて扉の中にはいりました。
扉の裏侧には、
〔#ここから3字下げ〕
「ネクタイピン、カフスボタン、眼镜《めがね》、财布《さいふ》、その他金物类、
ことに尖《とが》ったものは、みんなここに置いてください」
〔#ここで字下げ终わり〕
と书いてありました。扉のすぐ横には黒涂りの立派な金库も、ちゃんと口を开けて置いてありました。键《かぎ》まで添《そ》えてあったのです。
「ははあ、何かの料理に电気をつかうと见えるね。金気《かなけ》のものはあぶない。ことに尖ったものはあぶないと斯《こ》う云うんだろう。」
「そうだろう。して见ると勘定《かんじょう》は帰りにここで払《はら》うのだろうか。」
「どうもそうらしい。」
「そうだ。きっと。」
二人はめがねをはずしたり、カフスボタンをとったり、みんな金库のなかに入れて、ぱちんと锭《じょう》をかけました。
すこし行きますとまた扉《と》があって、その前に硝子《がらす》の壶《つぼ》が一つありました。扉には斯《こ》う书いてありました。
〔#ここから3字下げ〕
「壶のなかのクリームを颜や手足にすっかり涂ってください。」
〔#ここで字下げ终わり〕
みるとたしかに壶のなかのものは牛乳のクリームでした。
「クリームをぬれというのはどういうんだ。」
「これはね、外がひじょうに寒いだろう。室《へや》のなかがあんまり暖いとひびがきれるから、その予防なんだ。どうも奥には、よほどえらいひとがきている。こんなとこで、案外ぼくらは、贵族とちかづきになるかも知れないよ。」
二人は壶のクリームを、颜に涂って手に涂ってそれから靴下をぬいで足に涂りました。それでもまだ残っていましたから、それは二人ともめいめいこっそり颜へ涂るふりをしながら喰べました。
それから大急ぎで扉をあけますと、その裏侧には、
〔#ここから3字下げ〕
「クリームをよく涂りましたか、耳にもよく涂りましたか、」
〔#ここで字下げ终わり〕
と书いてあって、ちいさなクリームの壶がここにも置いてありました。
「そうそう、ぼくは耳には涂らなかった。あぶなく耳にひびを切らすとこだった。ここの主人はじつに用意|周到《しゅうとう》だね。」
「ああ、细かいとこまでよく気がつくよ。ところでぼくは早く何か喰べたいんだが、どうも斯うどこまでも廊下じゃ仕方ないね。」
するとすぐその前に次の戸がありました。
〔#ここから3字下げ〕
「料理はもうすぐできます。
十五分とお待たせはいたしません。
すぐたべられます。
早くあなたの头に瓶《びん》の中の香水をよく振《ふ》りかけてください。」
〔#ここで字下げ终わり〕
そして戸の前には金ピカの香水の瓶が置いてありました。
二人はその香水を、头へぱちゃぱちゃ振りかけました。
ところがその香水は、どうも酢《す》のような匂《におい》がするのでした。
「この香水はへんに酢くさい。どうしたんだろう。」
「まちがえたんだ。下女が风邪《かぜ》でも引いてまちがえて入れたんだ。」
二人は扉をあけて中にはいりました。
扉の裏侧には、大きな字で斯う书いてありました。
〔#ここから3字下げ〕
「いろいろ注文が多くてうるさかったでしょう。お気の毒でした。
もうこれだけです。どうかからだ中に、壶の中の塩をたくさん
よくもみ込んでください。」
〔#ここで字下げ终わり〕
なるほど立派な青い瀬戸の塩壶は置いてありましたが、こんどというこんどは二人ともぎょっとしてお互にクリームをたくさん涂った颜を见合せました。
「どうもおかしいぜ。」
「ぼくもおかしいとおもう。」
「沢山《たくさん》の注文というのは、向うがこっちへ注文してるんだよ。」
「だからさ、西洋料理店というのは、ぼくの考えるところでは、西洋料理を、来た人にたべさせるのではなくて、来た人を西洋料理にして、食べてやる家《うち》とこういうことなんだ。これは、その、つ、つ、つ、つまり、ぼ、ぼ、ぼくらが……。」がたがたがたがた、ふるえだしてもうものが言えませんでした。
「その、ぼ、ぼくらが、……うわあ。」がたがたがたがたふるえだして、もうものが言えませんでした。
「遁《に》げ……。」がたがたしながら一人の绅士はうしろの戸を押《お》そうとしましたが、どうです、戸はもう一分《いちぶ》も动きませんでした。
奥の方にはまだ一枚扉があって、大きなかぎ穴が二つつき、银いろのホークとナイフの形が切りだしてあって、
〔#ここから3字下げ〕
「いや、わざわざご苦労です。
大へん结构にできました。
さあさあおなかにおはいりください。」
〔#ここで字下げ终わり〕
と书いてありました。おまけにかぎ穴からはきょろきょろ二つの青い眼玉《めだま》がこっちをのぞいています。
「うわあ。」がたがたがたがた。
「うわあ。」がたがたがたがた。
ふたりは泣き出しました。
すると戸の中では、こそこそこんなことを云っています。
「だめだよ。もう気がついたよ。塩をもみこまないようだよ。」
「あたりまえさ。亲分の书きようがまずいんだ。あすこへ、いろいろ注文が多くてうるさかったでしょう、お気の毒でしたなんて、间抜《まぬ》けたことを书いたもんだ。」
「どっちでもいいよ。どうせぼくらには、骨も分けて呉《く》れやしないんだ。」
「それはそうだ。けれどももしここへあいつらがはいって来なかったら、それはぼくらの责任だぜ。」
「呼ぼうか、呼ぼう。おい、お客さん方、早くいらっしゃい。いらっしゃい。いらっしゃい。お皿《さら》も洗ってありますし、菜っ叶ももうよく塩でもんで置きました。あとはあなたがたと、菜っ叶をうまくとりあわせて、まっ白なお皿にのせるだけです。はやくいらっしゃい。」
「へい、いらっしゃい、いらっしゃい。それともサラドはお嫌《きら》いですか。そんならこれから火を起してフライにしてあげましょうか。とにかくはやくいらっしゃい。」
二人はあんまり心を痛めたために、颜がまるでくしゃくしゃの纸屑《かみくず》のようになり、お互にその颜を见合せ、ぶるぶるふるえ、声もなく泣きました。
中ではふっふっとわらってまた叫《さけ》んでいます。
「いらっしゃい、いらっしゃい。そんなに泣いては折角《せっかく》のクリームが流れるじゃありませんか。へい、ただいま。じきもってまいります。さあ、早くいらっしゃい。」
「早くいらっしゃい。亲方がもうナフキンをかけて、ナイフをもって、舌なめずりして、お客さま方を待っていられます。」
二人は泣いて泣いて泣いて泣いて泣きました。
そのときうしろからいきなり、
「わん、わん、ぐゎあ。」という声がして、あの白熊《しろくま》のような犬が二|疋《ひき》、扉《と》をつきやぶって室《へや》の中に飞び込んできました。键穴《かぎあな》の眼玉はたちまちなくなり、犬どもはううとうなってしばらく室の中をくるくる廻《まわ》っていましたが、また一声
「わん。」と高く吠《ほ》えて、いきなり次の扉に飞びつきました。戸はがたりとひらき、犬どもは吸い込まれるように飞んで行きました。
その扉の向うのまっくらやみのなかで、
「にゃあお、くゎあ、ごろごろ。」という声がして、それからがさがさ鸣りました。
室はけむりのように消え、二人は寒さにぶるぶるふるえて、草の中に立っていました。
见ると、上着や靴《くつ》や财布《さいふ》やネクタイピンは、あっちの枝《えだ》にぶらさがったり、こっちの根もとにちらばったりしています。风がどうと吹《ふ》いてきて、草はざわざわ、木の叶はかさかさ、木はごとんごとんと鸣りました。
犬がふうとうなって戻《もど》ってきました。
そしてうしろからは、
「旦那《だんな》あ、旦那あ、」と叫ぶものがあります。
二人は俄《にわ》かに元気がついて
「おおい、おおい、ここだぞ、早く来い。」と叫びました。
簔帽子《みのぼうし》をかぶった専门の猟师《りょうし》が、草をざわざわ分けてやってきました。
そこで二人はやっと安心しました。
そして猟师のもってきた団子《だんご》をたべ、途中《とちゅう》で十円だけ山鸟を买って东京に帰りました。
しかし、さっき一ぺん纸くずのようになった二人の颜だけは、东京に帰っても、お汤にはいっても、もうもとのとおりになおりませんでした。
注文の多い料理店
宫沢贤治
二人の若い绅士《しんし》が、すっかりイギリスの兵队のかたちをして、ぴかぴかする鉄炮《てっぽう》をかついで、白熊《しろくま》のような犬を二|疋《ひき》つれて、だいぶ山奥《やまおく》の、木の叶のかさかさしたとこを、こんなことを云《い》いながら、あるいておりました。
「ぜんたい、ここらの山は怪《け》しからんね。鸟も獣《けもの》も一疋も居やがらん。なんでも构わないから、早くタンタアーンと、やって见たいもんだなあ。」
「鹿《しか》の黄いろな横っ腹なんぞに、二三発お见舞《みまい》もうしたら、ずいぶん痛快だろうねえ。くるくるまわって、それからどたっと倒《たお》れるだろうねえ。」
それはだいぶの山奥でした。案内してきた専门の鉄炮打ちも、ちょっとまごついて、どこかへ行ってしまったくらいの山奥でした。
それに、あんまり山が物凄《ものすご》いので、その白熊のような犬が、二疋いっしょにめまいを起こして、しばらく吠《うな》って、それから泡《あわ》を吐《は》いて死んでしまいました。
「じつにぼくは、二千四百円の损害だ」と一人の绅士が、その犬の眼《ま》ぶたを、ちょっとかえしてみて言いました。
「ぼくは二千八百円の损害だ。」と、もひとりが、くやしそうに、あたまをまげて言いました。
はじめの绅士は、すこし颜いろを悪くして、じっと、もひとりの绅士の、颜つきを见ながら云いました。
「ぼくはもう戻《もど》ろうとおもう。」
「さあ、ぼくもちょうど寒くはなったし腹は空《す》いてきたし戻ろうとおもう。」
「そいじゃ、これで切りあげよう。なあに戻りに、昨日《きのう》の宿屋で、山鸟を拾円《じゅうえん》も买って帰ればいい。」
「兎《うさぎ》もでていたねえ。そうすれば结局おんなじこった。では帰ろうじゃないか」
ところがどうも困ったことは、どっちへ行けば戻れるのか、いっこうに见当がつかなくなっていました。
风がどうと吹《ふ》いてきて、草はざわざわ、木の叶はかさかさ、木はごとんごとんと鸣りました。
「どうも腹が空いた。さっきから横っ腹が痛くてたまらないんだ。」
「ぼくもそうだ。もうあんまりあるきたくないな。」
「あるきたくないよ。ああ困ったなあ、何かたべたいなあ。」
「喰《た》べたいもんだなあ」
二人の绅士は、ざわざわ鸣るすすきの中で、こんなことを云いました。
その时ふとうしろを见ますと、立派な一轩《いっけん》の西洋造りの家がありました。
そして玄関《げんかん》には
〔#ここから4字下げ、横书き、中央揃え、罫囲み〕
RESTAURANT
西洋料理店
WILDCAT HOUSE
山猫轩
〔#ここで字下げ终わり〕
という札がでていました。
「君、ちょうどいい。ここはこれでなかなか开けてるんだ。入ろうじゃないか」
「おや、こんなとこにおかしいね。しかしとにかく何か食事ができるんだろう」
「もちろんできるさ。看板にそう书いてあるじゃないか」
「はいろうじゃないか。ぼくはもう何か喰べたくて倒れそうなんだ。」
二人は玄関に立ちました。玄関は白い瀬戸《せと》の炼瓦《れんが》で组んで、実に立派なもんです。
そして硝子《がらす》の开き戸がたって、そこに金文字でこう书いてありました。
〔#ここから3字下げ〕
「どなたもどうかお入りください。决してご远虑《えんりょ》はありません」
〔#ここで字下げ终わり〕
二人はそこで、ひどくよろこんで言いました。
「こいつはどうだ、やっぱり世の中はうまくできてるねえ、きょう一日なんぎしたけれど、こんどはこんないいこともある。このうちは料理店だけれどもただでご驰走《ちそう》するんだぜ。」
「どうもそうらしい。决してご远虑はありませんというのはその意味だ。」
二人は戸を押《お》して、なかへ入りました。そこはすぐ廊下《ろうか》になっていました。その硝子戸の裏侧には、金文字でこうなっていました。
〔#ここから3字下げ〕
「ことに肥《ふと》ったお方や若いお方は、大歓迎《だいかんげい》いたします」
〔#ここで字下げ终わり〕
二人は大歓迎というので、もう大よろこびです。
「君、ぼくらは大歓迎にあたっているのだ。」
「ぼくらは両方兼ねてるから」
ずんずん廊下を进んで行きますと、こんどは水いろのペンキ涂《ぬ》りの扉《と》がありました。
「どうも変な家《うち》だ。どうしてこんなにたくさん戸があるのだろう。」
「これはロシア式だ。寒いとこや山の中はみんなこうさ。」
そして二人はその扉をあけようとしますと、上に黄いろな字でこう书いてありました。
〔#ここから3字下げ〕
「当轩は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください」
〔#ここで字下げ终わり〕
「なかなかはやってるんだ。こんな山の中で。」
「それあそうだ。见たまえ、东京の大きな料理屋だって大通りにはすくないだろう」
二人は云いながら、その扉をあけました。するとその裏侧に、
〔#ここから3字下げ〕
「注文はずいぶん多いでしょうがどうか一々こらえて下さい。」
〔#ここで字下げ终わり〕
「これはぜんたいどういうんだ。」ひとりの绅士は颜をしかめました。
「うん、これはきっと注文があまり多くて支度《したく》が手间取るけれどもごめん下さいと斯《こ》ういうことだ。」
「そうだろう。早くどこか室《へや》の中にはいりたいもんだな。」
「そしてテーブルに座《すわ》りたいもんだな。」
ところがどうもうるさいことは、また扉が一つありました。そしてそのわきに镜がかかって、その下には长い柄《え》のついたブラシが置いてあったのです。
扉には赤い字で、
〔#ここから3字下げ〕
「お客さまがた、ここで髪《かみ》をきちんとして、それからはきもの
の泥《どろ》を落してください。」
〔#ここで字下げ终わり〕
と书いてありました。
「これはどうも尤《もっと》もだ。仆もさっき玄関で、山のなかだとおもって见くびったんだよ」
「作法の厳しい家だ。きっとよほど伟《えら》い人たちが、たびたび来るんだ。」
そこで二人は、きれいに髪をけずって、靴《くつ》の泥を落しました。
そしたら、どうです。ブラシを板の上に置くや否《いな》や、そいつがぼうっとかすんで无くなって、风がどうっと室の中に入ってきました。
二人はびっくりして、互《たがい》によりそって、扉をがたんと开けて、次の室へ入って行きました。早く何か暖いものでもたべて、元気をつけて置かないと、もう途方《とほう》もないことになってしまうと、二人とも思ったのでした。
扉の内侧に、また変なことが书いてありました。
〔#ここから3字下げ〕
「鉄炮と弾丸《たま》をここへ置いてください。」
〔#ここで字下げ终わり〕
见るとすぐ横に黒い台がありました。
「なるほど、鉄炮を持ってものを食うという法はない。」
「いや、よほど伟いひとが始终来ているんだ。」
二人は鉄炮をはずし、帯皮を解いて、それを台の上に置きました。
また黒い扉がありました。
〔#ここから3字下げ〕
「どうか帽子《ぼうし》と外套《がいとう》と靴をおとり下さい。」
〔#ここで字下げ终わり〕
「どうだ、とるか。」
「仕方ない、とろう。たしかによっぽどえらいひとなんだ。奥に来ているのは」
二人は帽子とオーバーコートを钉《くぎ》にかけ、靴をぬいでぺたぺたあるいて扉の中にはいりました。
扉の裏侧には、
〔#ここから3字下げ〕
「ネクタイピン、カフスボタン、眼镜《めがね》、财布《さいふ》、その他金物类、
ことに尖《とが》ったものは、みんなここに置いてください」
〔#ここで字下げ终わり〕
と书いてありました。扉のすぐ横には黒涂りの立派な金库も、ちゃんと口を开けて置いてありました。键《かぎ》まで添《そ》えてあったのです。
「ははあ、何かの料理に电気をつかうと见えるね。金気《かなけ》のものはあぶない。ことに尖ったものはあぶないと斯《こ》う云うんだろう。」
「そうだろう。して见ると勘定《かんじょう》は帰りにここで払《はら》うのだろうか。」
「どうもそうらしい。」
「そうだ。きっと。」
二人はめがねをはずしたり、カフスボタンをとったり、みんな金库のなかに入れて、ぱちんと锭《じょう》をかけました。
すこし行きますとまた扉《と》があって、その前に硝子《がらす》の壶《つぼ》が一つありました。扉には斯《こ》う书いてありました。
〔#ここから3字下げ〕
「壶のなかのクリームを颜や手足にすっかり涂ってください。」
〔#ここで字下げ终わり〕
みるとたしかに壶のなかのものは牛乳のクリームでした。
「クリームをぬれというのはどういうんだ。」
「これはね、外がひじょうに寒いだろう。室《へや》のなかがあんまり暖いとひびがきれるから、その予防なんだ。どうも奥には、よほどえらいひとがきている。こんなとこで、案外ぼくらは、贵族とちかづきになるかも知れないよ。」
二人は壶のクリームを、颜に涂って手に涂ってそれから靴下をぬいで足に涂りました。それでもまだ残っていましたから、それは二人ともめいめいこっそり颜へ涂るふりをしながら喰べました。
それから大急ぎで扉をあけますと、その裏侧には、
〔#ここから3字下げ〕
「クリームをよく涂りましたか、耳にもよく涂りましたか、」
〔#ここで字下げ终わり〕
と书いてあって、ちいさなクリームの壶がここにも置いてありました。
「そうそう、ぼくは耳には涂らなかった。あぶなく耳にひびを切らすとこだった。ここの主人はじつに用意|周到《しゅうとう》だね。」
「ああ、细かいとこまでよく気がつくよ。ところでぼくは早く何か喰べたいんだが、どうも斯うどこまでも廊下じゃ仕方ないね。」
するとすぐその前に次の戸がありました。
〔#ここから3字下げ〕
「料理はもうすぐできます。
十五分とお待たせはいたしません。
すぐたべられます。
早くあなたの头に瓶《びん》の中の香水をよく振《ふ》りかけてください。」
〔#ここで字下げ终わり〕
そして戸の前には金ピカの香水の瓶が置いてありました。
二人はその香水を、头へぱちゃぱちゃ振りかけました。
ところがその香水は、どうも酢《す》のような匂《におい》がするのでした。
「この香水はへんに酢くさい。どうしたんだろう。」
「まちがえたんだ。下女が风邪《かぜ》でも引いてまちがえて入れたんだ。」
二人は扉をあけて中にはいりました。
扉の裏侧には、大きな字で斯う书いてありました。
〔#ここから3字下げ〕
「いろいろ注文が多くてうるさかったでしょう。お気の毒でした。
もうこれだけです。どうかからだ中に、壶の中の塩をたくさん
よくもみ込んでください。」
〔#ここで字下げ终わり〕
なるほど立派な青い瀬戸の塩壶は置いてありましたが、こんどというこんどは二人ともぎょっとしてお互にクリームをたくさん涂った颜を见合せました。
「どうもおかしいぜ。」
「ぼくもおかしいとおもう。」
「沢山《たくさん》の注文というのは、向うがこっちへ注文してるんだよ。」
「だからさ、西洋料理店というのは、ぼくの考えるところでは、西洋料理を、来た人にたべさせるのではなくて、来た人を西洋料理にして、食べてやる家《うち》とこういうことなんだ。これは、その、つ、つ、つ、つまり、ぼ、ぼ、ぼくらが……。」がたがたがたがた、ふるえだしてもうものが言えませんでした。
「その、ぼ、ぼくらが、……うわあ。」がたがたがたがたふるえだして、もうものが言えませんでした。
「遁《に》げ……。」がたがたしながら一人の绅士はうしろの戸を押《お》そうとしましたが、どうです、戸はもう一分《いちぶ》も动きませんでした。
奥の方にはまだ一枚扉があって、大きなかぎ穴が二つつき、银いろのホークとナイフの形が切りだしてあって、
〔#ここから3字下げ〕
「いや、わざわざご苦労です。
大へん结构にできました。
さあさあおなかにおはいりください。」
〔#ここで字下げ终わり〕
と书いてありました。おまけにかぎ穴からはきょろきょろ二つの青い眼玉《めだま》がこっちをのぞいています。
「うわあ。」がたがたがたがた。
「うわあ。」がたがたがたがた。
ふたりは泣き出しました。
すると戸の中では、こそこそこんなことを云っています。
「だめだよ。もう気がついたよ。塩をもみこまないようだよ。」
「あたりまえさ。亲分の书きようがまずいんだ。あすこへ、いろいろ注文が多くてうるさかったでしょう、お気の毒でしたなんて、间抜《まぬ》けたことを书いたもんだ。」
「どっちでもいいよ。どうせぼくらには、骨も分けて呉《く》れやしないんだ。」
「それはそうだ。けれどももしここへあいつらがはいって来なかったら、それはぼくらの责任だぜ。」
「呼ぼうか、呼ぼう。おい、お客さん方、早くいらっしゃい。いらっしゃい。いらっしゃい。お皿《さら》も洗ってありますし、菜っ叶ももうよく塩でもんで置きました。あとはあなたがたと、菜っ叶をうまくとりあわせて、まっ白なお皿にのせるだけです。はやくいらっしゃい。」
「へい、いらっしゃい、いらっしゃい。それともサラドはお嫌《きら》いですか。そんならこれから火を起してフライにしてあげましょうか。とにかくはやくいらっしゃい。」
二人はあんまり心を痛めたために、颜がまるでくしゃくしゃの纸屑《かみくず》のようになり、お互にその颜を见合せ、ぶるぶるふるえ、声もなく泣きました。
中ではふっふっとわらってまた叫《さけ》んでいます。
「いらっしゃい、いらっしゃい。そんなに泣いては折角《せっかく》のクリームが流れるじゃありませんか。へい、ただいま。じきもってまいります。さあ、早くいらっしゃい。」
「早くいらっしゃい。亲方がもうナフキンをかけて、ナイフをもって、舌なめずりして、お客さま方を待っていられます。」
二人は泣いて泣いて泣いて泣いて泣きました。
そのときうしろからいきなり、
「わん、わん、ぐゎあ。」という声がして、あの白熊《しろくま》のような犬が二|疋《ひき》、扉《と》をつきやぶって室《へや》の中に飞び込んできました。键穴《かぎあな》の眼玉はたちまちなくなり、犬どもはううとうなってしばらく室の中をくるくる廻《まわ》っていましたが、また一声
「わん。」と高く吠《ほ》えて、いきなり次の扉に飞びつきました。戸はがたりとひらき、犬どもは吸い込まれるように飞んで行きました。
その扉の向うのまっくらやみのなかで、
「にゃあお、くゎあ、ごろごろ。」という声がして、それからがさがさ鸣りました。
室はけむりのように消え、二人は寒さにぶるぶるふるえて、草の中に立っていました。
见ると、上着や靴《くつ》や财布《さいふ》やネクタイピンは、あっちの枝《えだ》にぶらさがったり、こっちの根もとにちらばったりしています。风がどうと吹《ふ》いてきて、草はざわざわ、木の叶はかさかさ、木はごとんごとんと鸣りました。
犬がふうとうなって戻《もど》ってきました。
そしてうしろからは、
「旦那《だんな》あ、旦那あ、」と叫ぶものがあります。
二人は俄《にわ》かに元気がついて
「おおい、おおい、ここだぞ、早く来い。」と叫びました。
簔帽子《みのぼうし》をかぶった専门の猟师《りょうし》が、草をざわざわ分けてやってきました。
そこで二人はやっと安心しました。
そして猟师のもってきた団子《だんご》をたべ、途中《とちゅう》で十円だけ山鸟を买って东京に帰りました。
しかし、さっき一ぺん纸くずのようになった二人の颜だけは、东京に帰っても、お汤にはいっても、もうもとのとおりになおりませんでした。
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